「・・・伽夜っ!」
手を伸ばした先には見慣れた天井。その先には笑う君は居ない。それは夜の夢。空しく夢の中の君に伸ばした手を僕はゆっくりと下ろした。 窓の向こうはまだ暗い。夜明けまであとどのくらいなのだろう。
「…はあ」
胸が苦しい。起き上がって空気をゆっくりと吐き出す。こうやって、夜中に飛び起きたのは何度目か。夢の中の君は僕を覚えている。それだけでも、僕は十分嬉しくて二人で話をして時間を過ごす。 すごく幸せだった。 けれど、やがて君は僕から離れて笑みを浮かべて、こう言う。
『もう、行かなくちゃ』
それは何?何処へ行くの? 一番好きなのに、大事なのに 君は再び僕を忘れてしまうの? 嫌だ。 僕を忘れないで。 お願いだから。 もう君の中に僕が居ないのは嫌だよ。 だから、離れていく君の名を呼んで手を伸ばす。 そこで夢は終わる。
(なんて残酷なんだ)
せめて夢の中では覚えていて欲しいのに。
「…伽夜」
目を瞑って布団に顔を埋めて精一杯想い出す。君との想い出だけは夢のように残酷じゃなくて優しいから。
――― そしてまた、恋しさと愛しさが募ってく。
akira×kaya
fin.