お題


窓の向こうに焦がれて去った君

僕の名前を呼ぶのは誰…?

「…逢いたいよ…」

今日も僕はこの狭い世界から君たちに祈る。

「いつまで…此処にいればいいんだろう…」

この狭い世界から出ることは禁じられて、一歩先の大きな世界に手が届かない。

「もう…助からないのに…延命なんていらない…」

この身体が時間を刻むのをやめないように10種類にも及ぶ薬の投薬。 この身体がここから居なくならないように封じるための清潔さ。ここに踏み止どまらせるための機械たち。

「ねえ何処にいるの…?」

憧れる世界の向こうに君たちはいる。

「空が青いな…」

見上げた空は眩しくてその光を浴びることは出来ても、温かいヒトの温もりや道端に咲いている花にさえ触れられない。

「…逢えないなら…僕が…逢いに行くよ…」

君たちが逢いに来れないならば、いっそのこと僕がゆくよ。 この器を捨てて。

「ここは僕の居場所じゃないから…だから…」

少年は静かに目を閉じる。

「人工で保たれている生命なんかいらない…待っていて。すぐに行くから…っ」

――やがて、少年の時は止まった。
 


written by 恭玲 site:願い桜