短編


はやる鼓動の先には、君が

外はまだ薄暗い。
西の方には藍が残って
夜の名残が残っている。
まさに夜と朝の境目。

澄んだ空気は冷気を含んで、
少し肌寒い。
薄手の上着を選んだのは
失敗だったかもしれない。
でも、日中は温度が二十℃以上
上がるのだからいいか。


「お」


もしかして、と思い息を強く吐くと
やはり白くなった。
秋は始まったばかりだが、
冬の足音がすでに
近づいているようだ。

周りは静寂に包まれている。
目に入ったアパートの窓を見れば、
カーテンは固く閉じられたまま。
まだ皆、穏やかな眠りの中だろう。

バス停に一人。
バスは定刻にやってきた。

中に入ると、寒い。
暖房をしているようだが、
温まっていない。
始発のバスだから、
しょうがないと妥協するしかない。
降りたら、温かい飲み物でも買おう。



早く行こう。
めったに会えない君に。  


written by 恭玲 site:願い桜